日々の雑務と喧騒に疲れた秋の日、そうだ、京都に行こうと思いついた。それも、中坊進二のことを全く知らない町、また、中坊進二自身も全く見知らぬ土地で自分探しをしたいという目論見だ。そこで訪れたのが「栄照院」である。京都には名所として知られる場所、無数の寺院が存在するが、その名は初めて知った。栄照院付近にはそれ以外にも趣ある寺院が軒並み並んでいたが、何故か中坊進二はそこに心惹かれた。他の寺院に比べると何処か殺風景で、シンプル、静寂で孤高との印象を感じさせる。だが、イヤな印象ではない。非常に硬派で着飾っていない雰囲気が今の中坊進二の気分に合った。その印象に相俟って、気高さと、凛とした堂々ぶりを感じさせ、媚びない空気も好みだった。階段を上がり、境内に入ると、何ともいえないキリリとした冷たさを感じ、身が引き締まる思いだった。こういう感情に理由はないのだ。あくせく働き、余裕をなくしていた自分を振り返り、自信をなくしていたけれど、これでいいのだ、シンプルでいいのだ、と涙がこぼれた。栄照院が寛永19年から続く由緒ある菩提寺だと知ったのは、帰宅して書物等で調べた後である。なるほど、370年の重みを感じたわけである。
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